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わかりやすい漢方薬解説・漢方理論解説

滋陰降火湯(じいんこうかとう)

滋陰降火湯の出典


万病回春


滋陰降火湯の構成生薬


当帰2.5、芍薬2.5、地黄2.5、天門冬2.5、麦門冬2.5、陳皮2.5、白朮あるいは蒼朮 3、知母1-1.5、黄柏1-1.5、甘草1-1.5、大棗1、生姜1(大棗、生姜はなくても可)


※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より
※単位は1日当たりのグラム


滋陰降火湯の効能・効果


体力虚弱で、のどにうるおいがなく、たんが切れにくくてせきこみ、皮膚が浅黒く乾燥し、便秘傾向のあるものの次の諸症:気管支炎、せき


※上記は一般用漢方製剤承認基準(厚生労働省医薬食品局)より


滋陰降火湯の処方解説


滋陰降火湯はその処方名の通り、滋陰(津液(しんえき)や血(けつ)を補う)することで気の熱性を抑制する漢方薬です。津液と血が十分にあれば身体は潤い、適度にクールダウンされます。逆に津液と血が不足してしまうと気の熱性が相対的に高くなってしまい、乾燥を中心とした症状にくわえて不快な熱感などが現れやすくなります。


滋陰降火湯は主に五臓六腑(ごぞうろっぷ)における肺(呼吸器)の潤い不足とそれによる熱性症状の改善に有効な漢方薬です。肺の津液(しんえき)が不足すると、具体的にはむせるような乾燥した咳、粘々とした切りにくい痰(時には血の混ざる痰)、喉の乾燥によるカサカサ感、声のかれ、口の中のパサパサ感といった症状が起こりやすくなります。


滋陰降火湯に含まれている麦門冬、天門冬、地黄は肺を滋陰して上記のような症状を改善します。気の相対的な過剰による不快な熱性症状は虚熱と呼ばれ、それを知母と黄柏が鎮めます。虚熱を鎮める知母と黄柏のペアは、滋陰降火湯と同じく滋陰剤に分類される六味地黄丸(ろくみじおうがん)から派生した知柏地黄丸(ちばくじおうがん)にも含まれます。


他にも芍薬と当帰は血を補うことで身体の栄養状態を改善し、白朮、甘草、陳皮は消化器の状態を整えて飲食物から気が生まれるのを手助けします。滋陰降火湯は津液や血だけではなく、強くはないですが気を補う力もある漢方薬です。したがって、体力がもともとない方、病気によって体力が衰えてしまった方、そして加齢によって衰えが目立ってきた方などに適した漢方薬といえます。


滋陰降火湯における補足


滋陰降火湯は肺の潤い不足である肺陰虚(はいいんきょ)に有効な漢方薬です。一方で潤いを与える効果は肺のみに限定されるわけではありませんので、皮膚の乾燥やドライアイ、爪や髪の荒れ、他には虚熱による長引く微熱や寝汗も見られるようなら滋陰降火湯は最適の処方といえるでしょう。


逆に咳と一緒に多くの痰が絡む、その痰も透明~白色で水っぽく、切りやすい(粘度が低い)ようなケースでは滋陰降火湯は不適です。あくまでも滋陰降火湯は陰虚による「乾燥」と、陰虚由来の虚熱による「熱性」が見られることを使用目標とします。

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文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)